『胎内で成人病は始まっている』

胎内で成人病は始まっている―母親の正しい食生活が子どもを未来の病気から守る
胎内で成人病は始まっている―母親の正しい食生活が子どもを未来の病気から守る

今年の3月、厚生労働省―「健やか親子21」推進検討会より「妊産婦のための食生活指針」の報告がありました。

健やか親子運動21」は、21世紀初頭における母子保健の国民運動計画として、2001年から10年計画で進められています。この計画もちょうど半分の年月にさしかかり、「妊産婦のための食生活指針」は、その中間評価として報告されたものです。

この報告では、食生活に関する行動が大きな問題として取り上げられています。これは、近年の日本人とりわけ妊産婦の食行動の変化を問題とするもので、「若い女性の朝食を食べない傾向」「体重が少ない人の割合の増加」といった、妊娠中のやせすぎを警告するものです。

最近の出産のトレンドともいえる「小さく産んで大きく育てる」ことは、とても危険なことだ。と言っているのですが、その根拠となっているのが、本書の著者デイヴィッド バーカーによる「成人病胎児期発症説」、ぞくに言うバーカー説です。この説は30年ほど前から提唱されているそうですが、最近では説の分子機序も明らかになりつつあり、21世紀最大の医学学説と言われつつあるのだそうです。

著者は英国における心臓病患者の分布図には明らかな地域差があることに着目し、そこから一つ一つ仮説を実証していきます。読み物としてもこなれていて、大変面白いです。

胎児は細胞分裂を繰り返しながら成長する。受精卵というたった一個の細胞からはじまって、42サイクルの細胞分裂をくぐりぬけるあいだに、胎児、赤ん坊へと育っていく。しかし生まれてからは、たった5サイクルの細胞分裂で赤ん坊からおとなになる。重要なのはここだ。人体の発達は、誕生前にもうだいたい終わっており、その後は限られた変化しか起こせない。

つまり、素材としての人体はほぼ胎児期に完成しているということです。著者は、ウィリアム・ブレイクの言葉を引用して説明しています。

「人間は、持っているものと、持つ可能性があるものを残らず抱えてこの世に登場する。生まれたときの人間は、植えつけと種まきがいつでもできる庭のようなものだ」

そして、「心臓病や脳卒中、糖尿病などは、胎児期から乳児期にかけ作られるらしい」という仮説がどんどん実証されていきます。ちょっと怖い話です。

前半はこの「成人病胎児期発症説」について、後半は栄養学的な、じゃあ妊婦はどんなことに気をつけたらよいかという話です。

さて、これは英国医学会でのお話です。だから、体型や栄養についても西欧の人々がモデルとしてあると思います。日本人がこの学説を血肉とするには、日本人としての食習慣・住環境の見直しも前提とすべきだと思います。でないと、またひどい勘違いとリバウンドが待っている可能性もありそうな気がします。

ちなみに、「妊産婦のための食生活指針」では、具体策として「食事バランスガイド」も提案しています。

参考資料:『月刊 母子保健 2006年3月号』

投稿者 suemura : 11:27 PM | トラックバック

『子育て支援システムと保育所・幼稚園・学童保育』

子育て支援システムと保育所・幼稚園・学童保育
子育て支援システムと保育所・幼稚園・学童保育

公立保育所民営化や幼保一元化施設など、保育にまつわる国の施策は様々なかたちで進み、そしてその問題点も多く取りざたされています。

本書では、こういった未就学児の保育をめぐる現状が、非常にわかりやすく整理されています。さらに、「問題点の洗い出し→問題解決への方向づけ」が的確に示されています。

もちろん、ちょっとこの辺は違うなあという部分も人それぞれあると思いますが、保育の現状と未来を考えるうえで、一つの確かな道しるべとなるのではないでしょうか。

投稿者 suemura : 04:52 PM | トラックバック

『パリの女は産んでいる』

パリの女は産んでいる―“恋愛大国フランス”に子供が増えた理由
パリの女は産んでいる―“恋愛大国フランス”に子供が増えた理由

フランスの出生率=1.90 日本の出生率=1.29 (2004年)

政府の少子化対策が功を奏し、ミニベビーブームなどといわれているフランスの子育てを取り巻く環境は、かなり羨ましいものですww。

出生率に関しては、現在では2.1近いという話をきくので、人口維持に必要といわれる合計特殊出生率(2.08)をクリアしてしまっているようです。

本書『パリの女は産んでいる』は、フランス在住の日本人女性が、フランスでの子育ての実態を、当事者の声として伝えてくれます。

いったいなぜフランスの女は産む気になるのだろうと考え始めたら、なんの変哲もない日常が、びっくりするほど日本と違うかもしれないと思えてきた。子供を産んでも仕事を続けるのが当然、母親になっても男性にとって魅力的パートナーであるのが当然という雰囲気、ママたちを支える託児や育休などの支援システム、婚外子やシングルマザーへの偏見のなさ、子供より親が優先という伝統……。

こんな感じの、フランスで子育てする筆者の日常と実感のスケッチに、フランス女性がかちとってきた自由についての考察も織り込まれています。

……なんとなく逆説めいているけど、ウーマンリブを担った世代において、母親になる女性の割合は増加したのだ。ということは、妊娠や中絶への権利要求は、母性の拒否ではなく、母親になる「時」を選択するための戦いだったということになる。

そして何より心に残ったのは、こんな一言。

私がフランスの女性を見ていていいなと思うのは、自分の欲望に忠実に自然体で幸せになっているところだ。

もちろん、女性が生きやすい社会という背景があってこそではあるけれど、個々人のもつこんな生の感覚、というか生きていくことのノリみたいなものが集まることによって、子供を産みたくなる社会が形成されていくような気がします。これはもちろん男性にとっても言えること。日本では、このような空気が非常に希薄なのではないかと思いました。

最後に、目次を書き出しときます。結構内容がイメージしやすいかも。

【第1章】 フランス女性は生涯現役
      ・出産は人生の分かれ目?
      ・ママになってもデート
      ・ママのおしゃれ
      ・女の現役
      ・フレンチ・ママの不倫の恋
      ・ダブルベッド
      ・大人の女

【第2章】 フランス出産事情
      ・パリのお産は無痛分娩
      ・国家負担の産褥体操
      ・生殖医療も保険でOK
      ・自由意志による妊娠中絶
      ・ピルが語るもの
      ・出産前診断

【第3章】 変わりゆく家族のかたち
      ・パリジェンヌ・ママは高齢
      ・「未婚の母」はマジョリティ!?
      ・同棲の流行
      ・シングルマザー
      ・パパとママは別れても
      ・継母の構図、ステップファミリー
      ・同性愛者と親になる権利

【第4章 】フレンチ・ママのサポートシステム      
      ・あなたはこの子のママですか
      ・ヌヌー再び
      ・ベビーシッター
      ・保育所の効用
      ・三年保育が100パーセント
      ・リカちゃんパパの選択
      ・パパと子育て

【第5章】 大人中心のリラックス子育て
      ・日仏離乳食考
      ・母乳育児
      ・日仏子育て比較
      ・子供服のモード
      ・保育学校はお勉強をするところ
      ・お誕生日会
      ・子供が欲しい

投稿者 suemura : 10:05 PM | トラックバック