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『ゆりかごからゆりかごへ入門』

アメリカの建築家ウィリアム・マクダナーとドイツの化学者マイケル・ブラウンガードの共著で、"Cradle to Cradle(ゆりかごからゆりかごへ)"という本があります。

Cradle to Cradle
Cradle to Cradle

Cradle to Cradle デザインと呼ばれる彼らの思想を伝える書物は、今までとは異なった新しい材料で作られた本なのだそうです。

本の用紙はポリマーを使っていて、表紙や接着剤もこのポリマーのみ。インクは無毒なもので、簡単かつ安全な処理方法、または高温の水槽で、ポリマーの用紙から洗い流すことができます。そしてこの紙とインクは、回収して再利用できるのですが、これまでの紙のリサイクル製品とは全く違った考え方によって作られており、リサイクルの過程で自然や人間に害を与えることがなく、自然の循環のなかにうまく取り込まれているのだそうです。

Cradle to Cradle デザインとは何かというと、つまりこの本の作りかたそのものが示しているとおりの、サスティナブルな社会・経済を実現化するための考え方ということになります。

この本はまだ日本語に翻訳されていませんが、その翻訳に先立っての入門書となるのが、『ゆりかごからゆりかごへ入門』(日本経済新聞社)です。

ここで、Cradle to Cradle という考え方をよく表している箇所を引用してみます。

誰もが、Cradle to Cradle の考え方を実践することによって実現する社会が、真のサスティナブルな社会です。

サスティナブルという言葉は、一般に、節約や、物を大切にするとか、環境に配慮することで、現状をこのまま10年、20年、30年後まで温存していくにはどうしたらいいかと考えることのように思われています。だが、そうではありません。そもそも日本語で「サスティナブル」を「持続的」と訳すことが間違っているのです。

マクダナーの著書『Cradle to Cradle』の中で、繰り返し何度も述べられていますが、サスティナブルとは、「発展的、成長的、流動的」なものであり、日本語に訳すと「循環型の生態系(自然のめぐり)をつくる」というのが真意に近いのです。

マクダナーは、すべて自然に還すことができる、化石エネルギーは使わない等々の、あらゆる環境問題をクリアしたものづくりを提唱しています。車でさえもこの考え方で開発中だそうです。以前、Newsweek誌でシカゴや中国の都市開発の記事を読んだときは、「こんなことが本当に可能なんだぁ」と半ば懐疑的に読んでいたことを思い出します。

たとえば京都造形大学教授の竹村真一さんが、地球と人間の未来を語るとき、人間の知恵なんていうものはまだまだ本当に浅知恵で、これからもっともっと自然に学んで、技術を磨いていけば、困難な環境も乗り越えていけるんだみたいな言い方をよくします。最初は「楽観的な人だなあ」くらいに思っていたんですが、それはそんな次元ではなく、未来の可能性に対しての姿勢が、アグレッシブなほどポジティブなんだということに最近気づきました。産業革命以来の人間の数々の失敗は、まだまだ未熟な人間の経験の一過程でしかなく、これからもっと自然と共生可能な技術を手に入れることも可能なんだということ。

私達は、そんな未来像のほんのまだ入り口をみつけたにすぎないのでしょうが、自分としては、そっちに行くしかないと思いはじめています。

投稿者 suemura : May 3, 2006 02:30 AM

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